2013年1月27日日曜日

Belgium national anthem ベルギー国歌


オランダ語を教わりながらお茶を囲んで語らうという「オ茶会」。この「オ茶会」というのは、ベルギーに長くお住まいの方が、ご好意でルーヴェン初心者である日本人にオランダ語を中心にルーヴェンでの情報など、さまざまなことを教えくださるという素晴らしい会合です。この会合を通じて交流を深める日本人も多くいて、ルーヴェン市在住者にとっては欠かすことのできない集いとなっています。
そんな会合で話題にされたテーマのひとつ、「ベルギー国歌」。本日のブログ記事はこのベルギー国歌についてです。

De Brabançonne

O dierbaar Belgie
O heilig land der vaad'ren
Onze ziel en ons hart zijn u gewijd
Aanvaard ons hart en het bloed van onze adren,
Wees ons doel in arbeid en in strijd.
Bloei, o land, in eendracht niet te breken ;
Wees immer u zelf en ongeknecht,
Het woord getrouw, dat ge onbevreesd moogt spreken :
Voor Vorst, voor Vrijheid en voor Recht.
Voor Vorst, voor Vrijheid en voor Recht.
Voor Vorst, voor Vrijheid en voor Recht.

<フラマン語版翻訳>
おお、親愛なるベルギーよ
父なる先祖たちから受け継がれた聖なる国土よ
我らの魂と精神を汝に捧げん
我らの力と血管からほとばしる血潮を受け止めよ
労働においても、戦いにおいても、我々の目的において真摯であれ
咲き誇れ、我が国土よ、分裂することなき団結のもと。
常に汝は汝のまま自由たらんことを。
忠誠という言葉、これを汝が恐れずに語れるよう願う。
王のため、自由のため、権利のため

まあ、ちょっと拙いところもありますが、自己流で翻訳してみました

先生のお話では、そもそも、ベルギー国歌は「La Brabançonne(ラ・ブラバンソンヌ)」というフランス語の曲で、オランダとの戦いを経て独立を果たした「ベルギー王国」の国歌として1830年制定されました。しかしながら当時の公用語はフランス語。当然国歌もフランス語のものだけでした。フランダースに住むオランダ語系住人にとっては、これは長く納得がいかないものだったことは想像に難くありません。およそ100年後の1938年、ようやくフラマン語版・ドイツ語版の歌詞が国歌として認められるようになったそうです。

ところで、フラマン語の歌詞を教わったあと、家でインターネットでフランス語の歌詞と見比べてみたんですけど、二つの歌詞はピッタリ一致しているわけではないみたいですね。まあ、歌詞なので韻を踏む必要があるので、そのへんの調整のせいかもしれませんが・・・。「国語」=「日本語」があたりまえである日本人にとっては驚かされることではあります。
ベルギーでは、米国やカナダのように学校で国歌を教えないのでしょうか?97年、フランダース系出身の首相候補が、ベルギー建国記念日にテレビ記者から「国歌を歌ってみてください!」と言われてベルギー国歌を思い出すことができず、勘違いしてフランス国歌を歌って大スキャンダルになったという事件もあったそうですが・・・。(なぜフランダース系の人がフランス国歌を歌いだしたのかは不可解ですが)。
http://www.afpbb.com/article/life-culture/life/2258548/1859659

「ベルギーの国歌はなかなか激しい歌詞ですね」というのが先生のお話でした。ただ、戦いの勝利をもって国土を確定した国家の場合、こうした勇ましい歌詞が国歌として好まれるのは自然の流れかもしれません。私はかつてカナダに住んでいたことがあるのですが、ベルギーの国歌の歌詞の意味を教えていただいたとき、カナダ国歌を思い出しました。カナダの国歌はこの歌詞ととてもよく似ています。カナダもアメリカとの戦いの後国土を確定した国ですので、やはりその根源にある精神が似ているのかもしれません。また、カナダも英語とフランス語の2カ国後を公用語とする国ですので、2カ国語の歌詞が国歌として認められています。その点もカナダと似ているなぁと思ったりしました(参考のためにカナダ国歌も下に記載しておきますね)。

世界を見渡してみると、こうした勇ましい歌詞の国歌もたくさんあるようですね。フランス共和国の国歌「ラ・マルセイエーズ」などは、もともと革命歌なのでさらに激しい歌詞ですし・・・。
その一方、歌詞のない国歌というのもあります。たとえば、スペインの国歌には公式な歌詞がありません。もともとこれは、「国王行進曲」という歌詞のない曲を国歌(国曲?) としたものでしたが、過去には歌詞が書かれて使用された時期もありました (フランコ独裁時代など) 。しかし、現在では歌詞のない国歌として認定されています。実は、現在においても歌詞をつける動きがあるようですが、バスク地方やカタルーニャ地方(バルセロナ周辺)といった地域とスペイン国家との歴史的文化的な背景があまりに複雑ゆえに、この試みの実現も難しいようです。スペインでは一応カスティーリャ語=スペイン語ということで認定はされているのですが、他の地域の住民にとってカスティーリャ語はあくまでカスティーリャ地方(マドリード周辺地域)の言語であって「国語」と言われることには抵抗があるようです。ゆえに、国歌の歌詞も棚上げということでしょうか。

国歌というものひとつを取り上げていろいろ調べてみても、それぞれの国の実情が表れてきて本当に勉強になるなぁと思いました。


参考<Canada national anthem カナダ国歌>
O Canada!
Our home and native land!
True patriot love in all thy sons command.
With glowing hearts we see thee rise,
The True North strong and free!
From far and wide,
O Canada, we stand on guard for thee.
God keep our land glorious and free!
O Canada, we stand on guard for thee.
O Canada, we stand on guard for thee
おお、カナダ。我らがふるさと我らが故国!
汝のすべての子孫に宿る真の愛国心。燃ゆる精神とともに興隆する汝を見守らん。
真の北国の強さと自由よ!遠く遥かなるところから、我らは汝を守るため立ち上がらん。
神は我が祖国に栄光と自由を守り給う。おお、カナダ。我らは汝を守るため立ち上がらん。

参考<建国記念日も国歌も知らない? ベルギー次期首相>
2007年7月23日 AFP】ベルギーで建国記念日の21日、次期首相として組閣要請を受けているキリスト教民主フランドル党(CD&V)のイブ・ルテルム(Yves Leterme)党首が、公共放送の取材に対して何の祝日かを答えられず、またベルギー国歌を歌うよう求められてフランス国歌を歌った。
 国家行事である祝賀式典に到着したルテルム氏は、公共放送RTBFの取材で今日は何の祝日かと質問され、「憲法記念日」と返答した。実際は1831年7月21日、レオポルド1世(Leopold I)が国王に即位し、立憲君主国となったことに由来する建国記念日だった。
 さらに国歌を知っているかと問われ、2、3小節を歌うよう求められると、同氏はほほ笑みながらフランスの国歌「ラ・マルセイエーズ(La Marseillaise)」の冒頭部分を歌い始めた。記者に、本当にそれがベルギー国歌「ラ・ブラバンソンヌ(La Brabanconne)」の歌詞だと思っているのかと問われると「分からない」と答えた。
 ただしRTBFは、建国記念日制定の由来を知っているベルギー人は5人に1人にすぎないと、ルテルム氏を「擁護」した。
 ルテルム氏率いるフラマン系のCD&Vは、6月10日の総選挙で30議席を獲得し、与党を抜いて第1党に躍進。約8年ぶりの政権交代となり、ルテルム氏は7月15日に国王アルベール2世( King Albert II)から組閣要請を受けた。
 ベルギーの人口約1050万人のうち、オランダ語を話すフラマン地域に600万人、フランス語を話すワロン地域に350万人、フランス語人口が大半を占める首都ブリュッセル(Brussels)に100万人が住む。
 フラマン地域は国内で最も裕福な地域で、同地域の各政党は、政治勢力の拡大、特に雇用政策の運営権限を連邦政府から地域政府に移譲するよう、連邦政府に求めている。(c)AFP