2013年2月11日月曜日

Binche バンシュのカーニバル


バンシュのカーニバルに行ってきました。2003年、世界無形遺産に登録されたベルギーのお祭。楽しい仮装と元気な雰囲気を楽しんできましたよ

<当日の旅程>
12:37Leuven発→Brussel-Noord乗り換え13:03発→14:13Binche着→(徒歩10分)→グランプラス(観光案内所)→15:00パレード見学→17:45Binche発→Brussel-Midi乗り換え→20:00頃Leuven着
参考URL:http://www.carnavaldebinche.be/home-eng.html http://www.bel2.jp/event/article/binche.html

<カーニバルについて>
カーニバルは謝肉祭と訳されているカソリックのお祭り。カソリックには復活祭前の四旬節(46日前。四旬とは40日のことだが、日曜日を除くので46日前からとなる)の水曜日(灰の水曜日)から復活祭の前日(聖土曜日)までの期間は肉食を控えるという伝統があります(現在はそれほどこの規律を厳格に守っている人は少ないようですが)。こうした禁欲の日々を迎える前に、享楽的にお肉を食べお酒を飲んで騒いでおこう!というのが、カーニバルのもともとの趣旨です。現在では、春を待つお祭りとして広く受け入れられており、各地で様々な仮装行列パレードなどが開催されます。ブラジル・リオデジャネイロのパレードなどが有名ですよね。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%AC%9D%E8%82%89%E7%A5%AD

<Bincheのカーニバルについて>
Bincheのカーニバルは、カーニバル期間の日曜日から火曜日まで3日間開催されます
(1日目・日曜日)
9時と3時に仮装パレード。グループ毎のテーマに沿った装束を着て街を練り歩く。私たちはこの日3時のパレードを見学。子供たちの仮装姿が可愛かったですよ。女装をした男性のグループもいました。
(2日目・月曜日)
若者や子供達中心の祭り。午前10時からビオラの演奏とともに若者がパレード。夜には花火があがる。
(3日目・火曜日 マルディグラ(肥沃な火曜日))
Bincheのカーニバルのメインイベント。
Gille(ジル)と呼ばれる独特の仮装をした男性たちが繰り広げる仮面祭。
夜明けまえ Gilleは各戸から徐々に集まってコミュニティ毎の集団を構成
午前7時すぎ Gilleたちが集団で朝食(なんと朝から生牡蠣とシャンパン!伝統的なGilleの朝食です)
午前8時半 約800名のGilleがグランプラスに集合して一斉に同じ仮面をかぶります。
Gilleが一日中街を練り歩く。
午後3時過ぎ グランプラス中心にダチョウの羽で飾られた豪華な帽子をかぶったGilleが、次々に群衆に向かってオレンジを投げる。無事キャッチできた人は一年幸運であるとか。
午後9時30分 祭りの終わり。花火があがってフィナーレを告げる。

<Gilleについて>
Bincheのカーニバルの主役、Gilleは所謂ピエロとは異なる存在です。祭りの起源は13世紀。それ以前のBincheは毛織物産業で栄えていた豊かな街でした。しかし、産業の衰えとともに街を支配していた有力者(貴族や富裕層)は街を去り、Bincheには貧しい地元の民だけが残されました。彼らはこの地で生きていかなければなりません。その彼らが、去っていった富裕層を模して仮装したのがGilleの姿なのです。豊かさを示す太った装束(太った姿を表現するために、Gilleの衣装の下に藁を詰めています)、仮面に描かれたメガネ(当時メガネはインテリの富裕層しか所有できなかった)とヒゲ(整えられたヒゲも富裕層ならではのもの)はその姿を象徴しているのです。カーニバル最終日・火曜日の朝8時半、Gilleの装束をつけた約800人の地元民が、グランプラス広場で一斉にGilleの仮面をつける瞬間は、この祭りのハイライトです。仮面をつけたとたんGilleは個々人の個性を離れてGilleという概念に昇華されるのです。仮面をつけるのはこの瞬間だけ。これ以外の時間に悪戯心で仮面を付けるような不埒者は以降祭りへの参加を許されなくなるという厳しい掟があるくらい祭りの重要な行事なのです。おそらく街が再び豊かな人々で溢れかえるほど栄えるようにという祈りを込めたお祭りなのでしょう。

Gilleになれるのは、Binche生まれ(または、10年以上Binche在住)の男性。家族にGilleがいること。そして、早朝から夜9時までおよそ16時間、重い装束をつけ木靴を履いて街を練り歩く体力があることという条件をクリアしなければGilleにはなれません。子供のGilleも認められていますが、子供だからといって疲れても抱っこやおんぶはしてもらえません。また、この祭りは基本的にBinche市民の自費で開催されています。衣装はもとより、3時からのパレードでかぶるダチョウの飾りのついた帽子は何十万円もするものだし、パレードで投げる約100個のオレンジも市民が自腹で購入しているもの。さらに、各コミュニティでは、オリジナルシャンパンを準備して一日中Gilleたちのふるまうのですが、この振る舞い酒の費用も相当なものになるのだそう。とにかく、この祭りに、街の人はすべてを捧げていると言っても過言ではありません。この精神は、日本の多くの祭り、例えば岸和田祭りなどと共通していますね。
写真はwikipediaから
http://fr.wikipedia.org/wiki/Carnaval_de_Binche
<世界遺産登録の経緯>
この仮面祭りが世界遺産に登録された経緯には、Samuël Glotzさんという一人の民俗学者が大きく関わっています。彼はBincheのカーニバル(Gilleの仮面祭)と世界各地に存在する仮面祭りの比較研究をおこないました。詳細な研究の結果、Bincheの祭り以外、同じ絵柄の仮面を大勢の人が一斉に付けるお祭りはないこと、すなわち、この祭りが歴史的文化的にBincheのオリジナルであることを立証しました。これを受けて、Bincheのカーニバルはユネスコ世界無形文化遺産として登録されることになりました。彼が研究のプロセスで蒐集した世界中の仮面は、現在、Bincheの仮面博物館に展示されています。彼は2006年に亡くなりましたが、現在は、彼の息子さんが跡を継いで仮面博物館の館長を務めています。毎年、カーニバルの際は、Bincheの市民が彼の業績に敬意を表するため、生前彼が住んでいた家の前で彼をたたえる歌を歌うそうです。

参考TV番組: NHK「世界遺産」バンシュのカーニバル
http://www.accu.or.jp/masterpiece/masterpiece.php?id=39&lg=jp
http://www.belgium-travel.jp/destination/by_theme/culture/heritage.htm
http://www.museedumasque.be/en/index.php

<情報いろいろ>
・列車の乗車券は、SNCBのプロモーションチケット「Valentine Duo Deal」を利用。 同一旅程の二人組で、ベルギーどこでもOK14.00EUR。取り扱いはインターネット購入のみ。

・バンシュのカーニバルは大変有名なお祭りなので、列車が非常に混雑します。Leuven方面からBincheに行く時は、Binche行き始発駅のBrussel-Noord駅で乗り換えると座れます。
・Binche駅からBrussel方面への帰りの列車は1時間に1本。Bincheは始発駅なので、列車は出発予定時刻の20分くらい前からホームに止まっています。早めに駅に行っておけば座れます。出発予定時刻ギリギリだと、座れないことがあります。

・Bincheのグランプラスに観光案内所があります。ここで、Bincheの地図や当日のパレードの道順などを教えてもらいましょう。

・観光案内所の地下にトイレがあります(有料0.40EUR)。それ以外でトイレを借りたい時は、街のカフェでお願いすれば貸してもらえます(有料の場合と無料の場合があり)。ちなみに、駅前のカフェではトイレを無料で貸してくれました。最初はお礼を言ってそのまま店を出ようと思ったのですが、やっぱりちょっと気が引けたし、列車の発車時刻までちょっと間があったので、一杯ビールを注文しました(Bincheの地ビール)。何気なく注文したのですが予想以上に美味しいビールで、それも良い思い出となりました。

・私たちは日曜日のパレード(3時駅前出発グランプラスまで)を見に行きました。スタート地点から500mくらい離れた交差点で待機。しかしさすがにベルギー時間。ゆっくりゆっくりパレードが進み、そこにパレードがたどり着いたのは何と3時40分ぐらいでした。とても楽しいパレードでしたが、最初のグループから最後のグループが通り過ぎるまで1時間半近くはかかりました。

・春を呼ぶカーニバルですが、私たちが行った当日はとても寒い日でした。パレードが通り過ぎるまでかなり長い時間を外で待つことになるので、完全防寒をおすすめします。

・カーニバルのパレードは、パレードする人が着飾っているのはもちろんなのですが、パレードを見学している人たちもいろいろな仮装をしていましたよ。子供たちだけでなく、大人も仮面をつけたりしていました。Bincheの街でも仮装グッズをいろいろ売っていましたよ。

初めて参加したBincheのカーニバル。その歴史や背景もふくめて、さまざまなことを勉強し楽しめたお祭りでした。