2014年11月30日日曜日

『図書館炎上―二つの世界大戦とルーヴァン大学図書館』 

ルーヴェンという町に関心を持つ人に、絶対に読んでほしい一冊。

この本は、第一次世界大戦・ドイツ軍によるルーヴェン大学図書館の破壊とその後の図書館再建にまつわる顛末を描いた歴史ドキュメンタリーです。
大学図書館というにはあまりにも壮麗な現在のKULeuven大学図書館。いったいなぜ、どのようにして、あのような豪華絢爛な図書館が建造されたのか。あの図書館にはどんな意味があるのか。
戦争による大学図書館の破壊とその再建という出来事を通じて、それに関わる人々(ベルギー人、ドイツ人、アメリカ人、フランス人・・・)の欲望や虚栄心、人間性が浮き彫りにされていきます。それはあたかもミステリー小説のような展開。図書館再建の機運はあるときは高まり、ある時は停滞し、登場人物たちによって図書館の命運も翻弄されていきます。当時のルーヴェン市民は、大学図書館は本当に再建されるのだろうか、と幾度思ったことでしょうか。
ルーヴェンに行ったことがなくとも十分に面白い一冊ですが、ルーヴェンの風景を知っていればさらに面白くかんじられるはず。中世のたたずまいをそのまま残していると感じられるルーヴェンの街並みですが、幾多の破壊と再建の歴史の上に築かれたものであることを感じさせられます。欧州がたどってきた複雑な歴史を、ルーヴェン大学図書館を通じて理解することもできます。ぜひ、ご一読を。
ちなみに、この本の日本語版の表紙写真は、昭和天皇が皇太子時代欧州歴訪中、ルーヴェンに立ち寄ったとき写された一枚。これ以外にも興味深い写真が多く掲載されています。

『図書館炎上―二つの世界大戦とルーヴァン大学図書館』 
ヴォルフガング シヴェルブシュ  (著), 福本 義憲 (翻訳)
法政大学出版局 (1992/10)