ルーヴァン・ラ・ヌーヴ。
ルーヴェン市とは曰く因縁のある新都市。その経緯についてはこちらのブログに大変詳しく書かれていました。
ベルギーの言語対立を象徴するルーヴェン(フレミッシュ読み)とルーヴァン(仏語読み)。ルーヴァン・ラ・ヌーヴは40年程の歴史の新しい街。純粋な計画都市というのは、欧州では珍しく、街歩き好きの私としては訪れないわけに行きません。この日は、KULeuvenの建築学部の先生に案内していただきながら、ルーヴァン・ラ・ヌーヴを散策。先生は、ルーヴェンからルーヴァンまでの行きの列車の中で、ルーヴァンラヌーヴの建築学的特徴や歴史についての詳しい講義もしてくださいました(列車の騒音の中だったので、聞き取りに苦労しましたが・・・トホホ)。
雨の一日でしたが、先生の様々な教えもあり、大変勉強になる街歩きでした。本当に、ありがとうございました。
ルーヴァンラヌーヴは、日本のニュータウンに似てますね。ちょうど同時期1960年代後半から開発された千里中央駅にコンセプトがよく似ています。駅に大きなショッピングモールが併設されていること、駅前広場周辺は車と歩行者完全分離で、車は駅地下を通って駐車場に入れるようになっていること、歩行者だけが入れる駅周辺のショッピングエリアを過ぎると、周辺に大学・住居エリアが広がっていることなどです。駅前商店街周辺には広場も設けられていて、各種イベントに使えるようになっています。町並みの外観の素材も統一されていて、小奇麗。雨の多いベルギー対応で、ショッピングエリアの店の前は庇が広くとってあって、街歩きしても雨に濡れないようになっています。
UCL(Universite Catholique de Louvain)の校舎は街と一体となって点在しています。学生寮もあります。基本的に学生の街ですね。建物などは、今の日本のニュータウンと比べるとからとちょっと古びているところ感じますが、何百年の歴史を持つ街に住むベルギー人には新しい街と映るでしょう。
私が感じたルーヴェンとルーヴァンラヌーヴの最も大きな違いは、ルーヴェン大学の分裂についての扱いです。
我がルーヴェンには、大学分裂の記憶を残すためのモニュメントは全くありません。一方ここルーヴァンラヌーヴには、大学分裂の歴史を示した説明看板が駅前商店街の中に設置されていて、このルーヴァンラヌーヴが大学分裂の結果生まれた町であることを忘れないよう、多くの人に訴えています。もちろん、我がルーヴェンの住人も、日頃口にはしないだけで、その経緯と苦しみを覚えているのですが・・・。ルーヴェンの人にとっては、黙殺してしまいたい思い出なのかなぁ。やはり大学を二分するって常識では考えられない痛みを伴うものですから。
年配のKULeuven卒業生と話をする機会があったのですが、彼女は仏語話者。かつてのKULeuven(ベルギー)は公用語が仏語だったのですから彼女はあまりフラマン語が得意ではありません。KULeuvenがフラマン語大学になってしまったことについて、今でも、納得がいっていない様子でした。母校がまるっきり別の大学になってしまったようなものですものね。フラマン語圏ルーヴェンでは、そうした人達の傷口に触れないように(?)あえて、KULeuvenの分裂について口にしないのかもしれません。
一方、ルーヴァンラヌーヴにとっては大学分裂は強く語り継がれなければならない事実であることは間違いないようです。彼らはこの理不尽な分裂を忘れてはいけないという気持ちを未だに抱いているようです。
まあ、こうした深い断絶の結果、両大学の交流もこれまではあまりなかったようで・・・。今後はどうなっていくかわかりませんが、ここにも仏語・フラマン語の言語対立の深さが存在していました。
ちなみに、大学以外あまり見所のないルーヴァンラヌーヴですが、駅から徒歩5分のところに「タンタン」ミュージアムが2009年にオープン。(入館料9EUR)タンタンファンは訪れてみると良いかなと思いました。
お昼は駅前のEXKIで。オーガニック系のセルフカフェで、ランチを取るにはちょうどいいチェーン店なのですが、残念ながら我がルーヴェンにはないんですよね~。
観光でルーヴァンラヌーヴに行かれる方は少ないと思いますが、建築やまちづくりに興味があれば面白いところかと思いました。