2012年3月30日金曜日

Begijnhofに暮らす(2) Begijnhofの歴史


もともとBegijnhofは、Begijnベギンと呼ばれる修道女の集合住宅地(”hof”というのは邸宅というような意味)で、低地地方(オランダ・ベルギー)の各地には同様の集合住宅地が点在しています。1998年、これらのうち13ヶ所が、ユネスコ世界遺産に一括登録されました。ルーヴェンのGroot Begijnhofは市内中心部から徒歩10分ほどのところにあり、多くのBegijnhofの中でも最大級のものであり、また大学の管理下にあるので保存状態も良く、こうした意味でもルーヴェン市にとって貴重な財産となっています。

そもそも、「ベギン」は戒律の厳しい生活を送るいわゆる修道女とは違って、Begijnhofで共同生活しながらも、俗世間での経済活動や個々の私有財産も認められている女性たちのことを指しています。Begijnhofは、中世・十字軍遠征などで配偶者をなくした女性たちの生活を支えるために発展してきた居住地ですので、ベギンたちは信仰生活を強いられているわけではなく、緩やかにつながって暮らしていて、コミュニティという要素が強かったようです。

ルーヴェンのBegijnhofも長くベギンたちのための住宅地であったのですが、時代の流れとともにベギンの数も減り、20世紀半ばにはそのエリアもだんだん荒廃していきました(最後のベギンは1980年代末に亡くなりました)。そこで、その保存と有効活用のため、1960年代、KULeuvenがこの敷地全体を入手し、内部を改装し大学関係者用宿舎として貸し出すことが決まりました。その家賃を維持管理費に当てて、修復の必要な歴史的建造物を保存していくというのは、とてもうまいアイディアですよね。
Begijnhofの敷地は朽ち果てかけた塀に囲まれていて、入口のところには門、裏側には頑強そうな扉があり(現在扉は常時開かれていますが)ここが閉じられた居住地であったことがよくわかります。敷地内には75棟の建物があります。現在では、この建物の内部を分割したりして、18軒を学生宿舎、22軒を一戸建て宿舎、145軒をアパート宿舎としてKULeuvenが活用しています。現在居住しているのは、KULeuvenのスタッフ、Visiting Professor やInternational Researcher、そして学生、合計450人程度が暮らしています。

参考文献
上條 敏子『ベギン運動の展開とベギンホフの形成―単身女性の西欧中世』 刀水書房 (2001/03)
田原 幸夫『世界遺産フランダースのベギナージュ―甦る中世のミニチュア都市』彰国社 (2002/11):実際にルーヴェンのベギンホフ保存・活用プロジェクトに関わった建築家の著書。
参考URL:http://www.spacia.co.jp/Mati/sisatu/2004/Belgium/index.htm
http://en.wikipedia.org/wiki/Grand_B%C3%A9guinage,_Leuven